捨てられた子ねこ②

理科の時間にみつけた子ねこは、
子どもたちの手によって拾われ、
そして今は、心ある新しい飼い主のもとで生きている。

もらい受けてくれた子いわく「順調です。」

この季節である。
あの後、冷たい雨も降った。

生後どれくらいかは分からないが、
あの小さな子ねこたちでは多分、
生きて凌ぐことは不可能であっただろう。

ふたつの命が救われた。
この一件に関わった子どもたちの心もホッとした。
(なにより、一番ホッとしたのは私である)


今回の件で、もっとも強く突きつけられたのは“責任”だ。

子ねこが捨てられていた。
まだおぼつかない足で、まるで「あなただけが頼りです」と
いうようにこちらに近づいてくる。
ミャーミャー、愛くるしい声でなく。

誰もが、見て見ぬふりなどできない状況。
実際、子どもたちは拾い上げた。

まず、ひろった時点で、
「もう一度置いていく」
という選択が非常にしずらくなる。

結局、最初に捨てた人間と同じ行為をするわけだから。

ひろって、じゃあ連れて帰ろう、とした時点で
「このあと私になにができるか」
という強烈な責任が生じる。

子どもたちに「なぜ拾ってきたのか」を問う。
「かわいかったから」
「助けたいと思ったから」
「とりあえず」…


それでは、「このあとどうするのか」を問う。
「誰かが飼ってくれる」
「そこまで考えてなかった」…


拾ってきても、その後自分の力で何とかできないのなら、
それは“無責任”ということになってしまうのではないか。

正直、私自身、ねこを拾ってきて、「じゃあどうする」の先のことまで
考えられていなかった。

「自分で後始末できないことは、しないよう気をつけな」

子ねこのもらい手が見つかるまでの間に言われた言葉で
脳裏に焼き付いている。至極もっともな意見と思う。

子どもたちに再度、「じゃあどうする」を問うた。
「飼ってくれる人をさがす」
という答えが出た。

昼休み、放課後と、ほとんどクラス全員が自分のこととして動いた。
学校中の先生や、飼ってくれそうな友だちに、訊いて歩いた。
家にも、「ねこは飼えないか」と電話で訊いた。

自分たちのクラスに飼える家庭はなかった。
絶望的な気持ちだった。

偶然にも、隣のクラスの子でもらい受けてくれる子がいた。
本当に奇跡的な思いがした。

うまくいったから、よかったのである。
結果論、よかったことになっている。

が、もし見つからなかったとしたら…


子どもたちは拾ってきたことに深い後悔をもつことになる。
もしかして自分たちが拾わずに、そのまま置いておけば
だれか飼える人が助けてくれたかもしれない。

そもそも、捨てねこだと思ったのは自分たちの勘違いで、
本当は近くに飼い主さんがいたのかもしれない。

さまざまな可能性を考えていくと、
拾ってきたことが必ずしもよかったと言いきれない気もしてくる。

見つからなかったら、
私が飼おうと思った。

正直、そこまでできるか心配で心配でしょうがなかったけれど、
そうして自分で面倒みれるところまでみて、
里親募集をし、もらわれていくところ までが自分に課された責任と思った。

「拾う」
という選択は想像以上に重かった。
しかし、
決して「無視」ということもできなかった。


そこで先生が無視しておいて、
やれ人とかかわれ とか
身の回りのことに関心を持て とか
言えない。

出会ったものを愛し、
それがたとえ自分の負担でも支えるものは支え、
みんなで寄りかかり合いながら生きる社会って、ステキだと思う。


“動物園”というものを世界で初めてつくったという人が言った言葉
「人は知っているものしか愛せない
   愛しているものしか守れない
     だから人には動物園が必要だ」

愛のみせ方
愛と共にやってくる責任


子どもたちは何を学んだのだろうか。






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2009年11月16日 Posted byしずおカードだらt。 at 00:54 │Comments(1)考える葦

この記事へのコメント
動物が教えてくれることって多いですね。
人間も、命や心を大事にしないとですね。
Posted by フンドシだくん at 2009年11月17日 16:16
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